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退院支援WOCナースが教える病院から在宅へ褥瘡ケアをつなぐ方法

阿部由紀子さん

阿部 由紀子 さん

地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立大久保病院
皮膚・排泄ケア認定看護師

2012年皮膚・排泄ケア認定看護師資格を取得後、2014年から東京都立病院機構東京都立大久保病院に勤務。2018年に特定行為研修を修了。

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東京都新宿区にある東京都立大久保病院は地域医療支援病院の認定を受けており、在宅療養後方支援病院として、在宅医療を提供している医療機関と連携して診療にあたっています。
今回は、当院の地域連携の取り組みと、退院支援WOCナースの立場から見た在宅との連携構築のポイントについてご紹介します。

新宿区は一人暮らし高齢者の割合が高く、東京23区内で第3位の高い水準にあります。東京都二次保健医療圏では「区西部医療圏」に属する新宿区ですが、同区分に属する杉並区と中野区も一人暮らし高齢者を非常に多く抱えている状況です。
そのような状況下にある新宿区、区西部医療圏は、地域包括ケアシステムを活用しながら、地域や在宅でケアができる仕組みを作っていかなければなりません。

一人暮らし高齢者の割合が高い
区西部医療圏

一人暮らし高齢者の割合が、東京23区内で3位となった新宿区。同じ区西部医療圏に属する杉並区と中野区も4位5位と続く高い割合となっている。

■東京23区の一人暮らし高齢者の割合[新宿区HPより引用]
医療・介護需要がますます増大化

今後の医療・介護の需要予測を立てているグラフからも、全国平均に比べて、区西部医療圏は医療も介護も需要が増える見込みとなっている。

■東京都区西部医療圏の状況[東京都区西部医療圏|地域医療情報システム(日本医師会)(jmap.jp)2023年4月9日閲覧より引用]

病院の対応

現在、14ある都立病院全てに「患者・地域サポートセンター」を設置しています。患者支援グループ、入退院支援グループ、地域連携グループに分けて、それぞれのグループが連携しながら地域の医療者とのパイプ役を担い、地域連携に取り組んでいます。ここからは、当院の入院前から退院までの流れをポイントにまとめてご説明します。

【 入院早期からの介入の必要性 】

入院前から介入することで、入退院支援加算を取得できることはもちろん、患者さんやご家族の状況や意思を病棟スタッフにも共有できます。また、それにより、理想的な入院期間を超過することなく退院に移行することができます。

■ 入院前説明外来

予定入院が決定した患者さんを対象に、入院時情報連携シートを記載してもらい、院内スタッフに共有します。
この外来の段階で、患者さんの各サービスの利用状況、医療・介護保険の負担割合などを把握し、退院調整に役立てます。褥瘡に関する有病・既往の情報も専従WOCNに共有されます。

【 地域包括ケア病棟の活用 】

一般病棟で急性期治療は終了したけれど、継続的なリハビリが必要な方や、退院に向けたソーシャルケアの調整が必要な方は、地域包括ケア病棟に移り、在宅に向けての医療や支援を行います。また、在宅や施設からのサブアキュート入院やレスパイト入院でも使用可能です。地域包括ケア病棟には、一般病棟から移ってから60日入床可能です。長いようで意外と短いため、実際には一般病棟の時から退院を見越した調整を進める必要があります。

入院期限:60日

患者さんの退院調整と並行して、地域の介護施設や訪問看護ステーションなどとの連携を進めていくのも患者・地域サポートセンターの役割です。
病院側から積極的に施設やステーション、さらには区役所といった行政機関などへも訪問して顔を合わせていくことで関係性を築き、何かあった際に躊躇なく直接電話やメール、クラウドなどでやり取りできるようになりました。

【 訪問看護ステーションとの連携体制の強化 】

訪問看護ステーションと関係性を構築することで、各ステーションの特徴を把握できて、連携体制の強化につながります。例えば、男性スタッフが多いステーション、居宅もリハビリも揃うステーション、サテライトが充実しているステーションなど、それぞれの強みを把握することで、患者さんにマッチした訪問看護ステーションをご案内し、効果的な在宅ケアを実施できます。

病院

それぞれの強みを
把握して
スムーズに
在宅医療へ移行

訪問看護ステーション

  • 男性スタッフが多い
  • 居宅・リハも全部ある
  • サテライトがたくさんある
多職種連携による在宅医療の提供

【 在宅へ移行する際に病院が注意すべきこと 】

病院ではできる処置でも、在宅ではできない処置もあるため、「退院後も継続できるか」を考えることがとても大切です。これは褥瘡ケアに限ったことではありませんが、在宅で材料は手に入るのか? 金銭的負担は? 実際に実施する人は? 週にどのくらいやるのか? などを当院では病棟と患者・地域サポートセンターやソーシャルワーカーも含めたカンファレンスで話し合って詰めています。
それでも在宅では治療の継続が難しい状況が発生した際は、病院内の職員だけで悩まず、訪問看護ステーションの訪問看護師など地域の多職種と直接やりとりして、在宅での処置について相談することが重要です。在宅医療の現場視点での意見を聞くことで、入院中に在宅と同じ環境で処置を実施してみるなど、退院後を見据えた対応につながります。

【 退院後の患者のサポート 】

退院後訪問指導を行うことで、在宅療養への不安をカバーし、在宅生活を支える多職種と連携しながら在宅療養の継続を可能にします。

■ 退院後訪問指導までの流れ

合同カンファレンス

訪問日時調整

訪問

POINT

合同カンファレンスの実施

訪問前には、在宅医、訪問看護師、ケアマネージャー、病院主治医、病棟看護師、退院調整専任看護師が参加して合同カンファレンスを実施。在宅での療養生活の方向性を話し合い、情報を共有することで円滑な移行、シームレスなケアにつながる。

POINT

退院後訪問指導料の活用

医療ニーズが高い患者さんの場合、「退院後訪問指導料」を活用することで、入院医療機関の医師の指示を受けた看護師が在宅または施設を訪問して、退院後も継続的な支援を行うことができる。

病院で完結する医療から、地域で完結する医療へシフトしている今、病院側の役割も変化しています。病院から在宅の現場へ出向いて、地域の医療職、看護職、介護職と、患者さんやご家族の想いをつないでいくことで、「住み慣れた家で、その人らしい生活を継続する」ことを目指していきたいと思います。

●以上の内容は、あくまで予防対策の一例として紹介するものであり、効果を保証するものではありません。
●執筆者のご所属、施設の状況、ケア方法、症例などは執筆当時(2023年11月)時点のものです。

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