みんなの、学術レポート
専門家の知見がつまったケースレポートや
現場の人たちのリアルな発表レポート。
政田 美喜 さん
三豊総合病院 皮膚・排泄ケア認定看護師
当院は、地域拠点病院として、地域救命救急センタ-、循環器病センターなど急性期医療から老健施設・居宅介護支援事業所を有し、在宅医療や地域介護・福祉へ繋げる地域完結型医療を提供する医療機関として個々の患者様のニーズにあわせた医療を提供しています。
MDRPUとその対策のポイント
医療関連機器圧迫創傷*(MDRPU)は、自重以外の圧迫が要因となり皮膚および皮膚粘膜移行部に生じた損傷です。MDRPU発生の原因となる身体への侵襲的治療(処置)には、クリティカル領域では人工呼吸器や非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)、体腔内留置カテーテル(PCPS. IABP. 胸・腹腔ドレーンや膀胱内留置カテーテルなど)にはじまり、経鼻管や末梢血管ルートなどの管理に伴う皮膚障害が問題となります。また、骨折などにより補装具を装着している・リハビリなどの靴など圧迫のみならず皮膚へ摩擦やずれにより二次的な皮膚損傷を招く事象がよく見受けられます。そうした問題を発生させない予防的ケアを実践し、二次的な皮膚損傷を回避することが重要となります。そのためには、ケア用品の特性を考慮し、問題解決に有効な用品使用と工夫的な使用を検討することが大切です。また、予防的に使用する上では、使用する対象者が多ければよりコストパフォーマンスの良い製品の使用を視野に入れていくことも重要となります。
*2023年8月31日、「医療関連機器圧迫創傷」の名称が「医療関連機器褥瘡」に変更になりました。
- 今回MDRPU対策で使用したのは「ココロール」
-
・必要な大きさにカットして使用できるほか、重ね貼りも
可能なので看護師の裁量によって様々なケアの工夫が可能。 ・予防的ケア専用品のため、創傷被覆材と比較して
コストパフォーマンスに優れる。
使用箇所:弾性ストッキング下の脛骨の突出部
年齢・性別:76歳、男性
現 状
術後によく使用されるため、ストッキングの上から機械で加圧し過剰に圧がかかり、皮膚の損傷を招くことがあった。そのため弾力包帯で保護し、機械の使用をしていたが、ワークロードの負担があった。着圧式ストッキングのみならず、逐次型空気圧式マッサージ器使用によるDVT予防を行い、皮膚障害を発生するケースが少なくない。
対 策 後
逐次型空気圧式マッサージ器を使用する場合は、弾力包帯へ変更せずにココロールの追加使用のみでワークロードの負担軽減とコストダウンにもつなげられた。
-
剝れ防止のために
更に上から
フィルム材の貼付を行う -
貼付日を創処置同様に
記載し、定期的に
皮膚の評価を行う -
皮膚の状態に合わせて
剝す方向の
矢印記載も明記する
使用箇所:NPPV・BIPAPマスク
年齢・性別:82歳、女性
現 状
▶皮膚保護をしても逆に段差ができエアーリークしてしまう。 ▶マスク固定を強くすると痛みの訴えがある。 ▶マスクの形状を変えるが皮膚刺激の部位が異なるため同様に皮膚の損傷を来す。 ▶エアーリークによりマスク固定を強くしてしまい、潰瘍へ至ることが多い。 ▶マスクの形状にそって特に強く圧迫される鼻部、前顎部、またはほうれい線に沿って発生しやすい。
対 策 後
創傷側へは被覆材貼付されており、さらにココロールをマスク側へ貼付することで、マスクのずれが回避できた。組織のずれ回避に繋がり、疼痛軽減につながった。
-
マスク側に
使用する -
マスクの
幅よりやや広めに
カットする -
隙間を補正する場合は、
ココロールを2~3枚分
重ねあわせて調整する
- 【NPPV以外のマスクにも応用可能】
その他の使用例
足趾切断や足趾の皮膚損傷患者への体重負荷回避の工夫
-
例1
靴の硬さなどを確認、保護したい部位に差し込む
-
例2
足先全体をカバーするサイズを差し込む
-
例3
セルフケア度清潔度などを考慮して指先を包み込む
-
皮膚へ直接貼付する際は
貼付部位に合わせてスリットを入れる厚みが欲しい場合は、何枚も貼り合わせる
酸素カニュラの摩擦軽減
-
鼻孔下の皮膚が発赤
痛みの訴えあり -
カニュラにココロールを上図のように貼付。
痛み消失、安楽へ
膀胱留置カテーテルによる刺激の軽減
-
刺激や圧迫による水疱形成やハルンバッグとの接続部による圧迫
-
ココロールをカテーテルに巻き付けて貼付
状況に応じて上からフィルム固定する
IVルート接続部の圧迫軽減
浮腫などにより皮膚損傷の原因になる。
不織布ガーゼを接続部の下へ、
または被覆材の使用⇒ココロールで代用
コストパフォーマンスを考えて使用用品をココロールに変える
-
コルセットの接触圧迫部位の調整使用種々の補強材、被覆材⇒ココロールへ
-
鋼線牽引器具の圧迫
補強材⇒ココロールへ -
頚部骨折後:架台による水疱形成や、術前、術中の整復による水疱形成が考えられる場合、事前にココロールを貼付
●執筆者のご所属、施設の状況、ケア方法、症例などは執筆当時(2019年7月)時点のものです。
▼ 院内勉強会などに便利な<PDF>はこちら
学術レポートを含む、全ての資料が
何度でも自由にダウンロードできます。
PDFのダウンロードには、事前にお申し込みが必要です。