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2024年の診療報酬改定では、精神科病棟以外のすべての病棟を対象に、「身体拘束の最小化に向けた取り組み」が強化されました。
「身体拘束を最小化に向けた取り組み」には、身体拘束最小化の基準が決まっており、その基準を満たさない場合には、入院基本料や特定入院料または、短期滞在手術等基本料(※短期滞在手術等基本料1を除く)の所定点数から1日につき40点減算される場合があります。つまり、2025年6月以降、医療現場で「身体拘束最小化の基準」が実施されていないと、ペナルティーが科せられるのです。
最小化の取り組みは、2025年6月以降に本格的に実施され、2025年5月31日までは、医療現場で「身体拘束最小化に向けた体制」を整えるための準備期間となります。
この記事では、身体拘束の最小化が強化された理由や最小化の基準、緊急やむを得ず身体拘束を行った場合の手続きなど、「身体拘束の最小化に向けた取り組み」について、ポイントをわかりやすく解説します。
●身体拘束の最小化はなぜ強化されたの?
身体拘束の最小化が強化された背景には、「患者さんの尊厳を守ること」が理由の一つとして挙げられます。
身体拘束は、「障がい者の能力や権利を奪うこと」や「本人の尊厳の侵害と、身体的・精神的な弊害」につながってしまいます。
それだけではなく「家族の精神的負担」や「職員のモチベーション低下・支援技術の低下」などの悪影響も同時に引き起こしてしまうのです。
ですから、身体拘束の最小化に取り組むことは、患者さんの尊厳を取り戻し、身体拘束による悪影響を断ち切るためにも、非常に重要なことなのです。
●具体的な取り組みには何が必要?
以下の「身体拘束最小化の基準」は、身体拘束の最小化に向けて病院が実施しなければならない、具体的な取り組みを示しています。
「身体拘束最小化の基準」の中でも、特に重要なポイントを以下の図に示しました。
上記の基準を満たすため、医療現場では2025年5月31日までに各病院が自主的に院内の体制や対策を整えていくことが求められます。
●緊急やむを得ず身体拘束を行う場合の条件と手続き
医療現場では常に患者さんの安全を守るため、やむを得ず身体拘束を行う状況に直面することがあるかもしれません。
大前提として、身体拘束は避けるべき行為とされていますが、緊急やむを得ない場合の条件がすべて揃った時に限り、身体拘束が認められる場合があります。
では、そのような緊急やむを得ない場合とは、どのような条件が定められているのでしょうか。
以下は、その3つの条件を示しています。
さらに、やむを得ず身体拘束を行った後には、以下の4つの手続きを必ず行う必要があり、以下の手続きに不備がある場合には、減算のペナルティーが科せられます。
身体拘束には患者以外にも家族や職員にも影響を及ぼすことから、ご家族の十分な説明や報告が必ず必要になります。
この4つの手続きは実施して終わりではなく、次回からの支援を見直し、身体拘束を繰り返さないための重要なプロセスです。そのため、この手続きを通じて自分たちの支援の方法を振り返り、今後の改善につなげる姿勢を持つことが大切になります。
今回の記事では、身体拘束最小化が強化された理由や最小化の基準、緊急やむを得ない場合の手続きなどについて詳しく解説しました。
今後は、患者さんの安全を守るだけでなく、家族や医療従事者全員が安心してケアに専念できる環境をつくるため、医療現場での最小化に向けた対策やチームとしての取り組みが必要になってきますが、具体的にどんな対策を行っていけばよいのか、悩む方も多いのではないでしょうか。
以下の記事では、身体拘束の最小化につながる患者さんの「自己抜去の防止対策」について詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
※1 参照:令和6年度診療報酬改定の概要【医療全体版】(厚生労働省)35/380
※2 引用元:身体的拘束等の適正化の推進(厚生労働省)5/17(留意点について文章のみ引用)
※3 引用元:身体的拘束等の適正化の推進(厚生労働省)6/17(手続きについて文章のみ引用))